ドローンのリモートIDって何？【簡単解説】

ドローンのリモートIDについての解説

ドローンのリモートIDについての解説

1. リモートIDとは

　リモートID（Remote ID）は、ドローンが飛行中に自らの識別情報をリアルタイムで他の航空機や地上の受信者に送信する仕組みです。このシステムは、ドローンの運行状況や所有者の情報を関係者が把握できるようにし、空の安全性を高めるために設計されています。リモートIDは、飛行中のドローンに関連する情報を第三者が容易に取得できるようにすることで、無許可飛行や事故のリスクを低減することを目的としています。

2. 導入の背景

　日本におけるドローンの利用は近年急速に拡大しています。商業利用では、物流や農業、建設現場での点検、災害時の状況把握など、さまざまな分野でドローンが活用されています。趣味としての利用も増え、特に空撮やレースなどが人気を博しています。しかし、その一方で、無許可の飛行や飛行ルールの無視が問題視され、実際に事故やトラブルが発生するケースも増えてきました。

　例えば、2020年に発生した事故では、あるドローンが無許可で飛行していた際に、近くの公園にいた子供に衝突しました。この事故は大きな怪我には至りませんでしたが、ドローンの安全性に対する懸念が高まりました。また、2021年には、東京都内でドローンが無断で高層ビルの上空を飛行し、他の航空機との接触の危険性が報告されました。このような事例は、ドローンの運用が適正でない場合に発生するリスクを明らかにし、国土交通省がドローンの運用を適正化する必要性を強く感じる要因となりました。

　これらの問題を受けて、国土交通省はドローンの運用を適正化し、安全性を向上させるためにリモートIDの導入を進めることを決定しました。リモートIDは、ドローンの飛行情報を透明化し、飛行者の責任を明確にすることで、ドローンの安全な利用を促進する重要な手段となると期待されています。このように、リモートIDの導入は、ドローンの利用者や一般市民にとって、より安心して空を利用できる環境を提供することを目的としています。

3. リモートIDの必要な情報

リモートIDでは、飛行中のドローンが送信する情報には、以下のような内容が含まれます：

ドローンの識別情報: 各ドローンに固有の機体IDやシリアルナンバーが含まれます。これにより、どのドローンがどのように運用されているかを追跡できるようになります。
飛行中の位置情報: ドローンの現在の位置をリアルタイムで送信します。これにより、他の航空機や地上の受信者がドローンの飛行状況を把握することができます。
飛行の高度: ドローンの現在の高度情報も含まれます。これにより、他の航空機との衝突リスクを低減するための情報が提供されます。
飛行者の情報: オプションで、飛行者の名前や連絡先情報が含まれることもあります。これにより、何か問題が発生した際に迅速に対応できるようになります。

これらの情報は、飛行の安全性を確保し、事故やトラブルの際に迅速に対処できる基盤を提供します。

4. 技術的要件

リモートIDを実装するためには、いくつかの技術的要件が存在します：

無線通信: ドローンは特定の周波数帯域で識別情報を発信しなければなりません。この通信は、他の航空機や地上の受信者が受信できる形式で行われます。無線通信のプロトコルは、信号の安定性や範囲を考慮して設計されています。
GPS機能: ドローンは、正確な位置情報を提供するために高精度なGPSを搭載する必要があります。GPSは、飛行中のドローンが自らの位置を正確に特定するために不可欠です。
データ送信機能: リモートID情報を他のデバイスに送信するための機能が必要です。この機能は、送信する情報の暗号化やセキュリティの確保も含まれます。データの正確性やセキュリティを確保するための技術的な工夫が求められます。

これらの技術的要件は、リモートIDの運用がスムーズに行えるようにするための基本的な条件です。

5. 規制と導入状況

　日本でもドローンの利用が増える中で、リモートIDの導入が期待されています。国土交通省は、2023年からすべてのドローンにリモートIDの実装を義務付ける方針を打ち出しました。この法律により、無許可の飛行や飛行ルールの違反を抑止し、より安全なドローン運用が実現されると考えられています。

　リモートIDの導入により、関係者はリアルタイムで飛行情報を取得できるため、ドローンに関する情報の透明性が向上します。これにより、トラブルが発生した際の迅速な対応が可能となり、一般市民の信頼を得ることにもつながります。さらに、航空機との衝突リスクを低減し、より安全な空の利用が促進されることが期待されています。